飲食業でマネジメントやマーケティングを行う際に理解すべきマズローの欲求5段階説

飲食業でマネジメントやマーケティングを行う際に理解すべきマズローの欲求5段階説

今回は飲食業でマネジメントやマーケティングを行う際に理解すべきマズローの欲求5段階説について解説します。
基本的なマズローの欲求5段階説を腹落ちできるレベルで解説。
これを提唱したのはアメリカの心理学者(アブラハム・マズロー)です。

マズローは「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生き物である」と仮定したうえで、人間の欲求を5段階の階層に分けました。

マズローの欲求5段階説を基に人の欲求を深く理解することができれば、皆さんのマーケティングによる3C分析に活用したり、マネジメント戦略を策定する際、困難に立ち向かう際にリーダーシップを発揮する場面において個々のスタッフの現在位置を把握するのに大変役に立ちます。

 

マズローの欲求5段階説についての解説

マズローの欲求5段階説の各欲求は以下のとおりです。

■ 生理的欲求

■ 安全的欲求

■ 社会的欲求

■ 承認欲求

■ 自己実現欲求

マズローはこの欲求の段階について、人は基本的に上で書いた順番に欲求を発生させるのだと定義しました。

生理的欲求が満たされれば、安全的欲求が満たしたくなり安全的欲求が満たされたら、社会的欲求が満たしたくなるといった感じです。

 

■ 生理的欲求

 

生理的欲求は生命維持には欠かすことのない根本的な生命の強い欲求です。

3大欲求といわれる性欲、睡眠欲、食欲もこれに該当します。

その他に生命を脅かさない範囲での住居や衣服といった具合でしょうか。

 

■ 安全的欲求

 

安全欲求は安心、安全に暮らしたいとする欲求です。

生理的欲求と同じように強い欲求といえるのだと思います。

この安心・安全に暮らしたいということを不安を取り除きたいと変換することが出来ます。

例えば、犯罪や事故に巻き込まれない生活や健康な生活、老後の不安などが根本的な欲求として挙げられると思います。

不安や混乱からの自由や構造、秩序、法、制限などを求めるのも安全への欲求です。明るさに慣れた現代人が暗い森に入ると恐怖を覚えるのも、これは防衛的態度の現れで安全の欲求からくるものです。

安全への欲求が人は今の生活を維持したいと願うために現状維持しようとの心理が強く働くのだと言われています。

 

■社会的欲求

 

社会的欲求は孤独を避けたいとする欲求です。

所属と愛の欲求、社会帰属欲求とも言います。

言い換えれば、どこかに所属して人間関係をもっていたい、誰かに愛されたいなどです。

恋人がほしいや家族がほしいや周りと浮きたくないなどはこれに該当します。

FacebookやTwitterに代表されるサービスもこれを満たすビジネスモデルです。

 

■承認欲求

 

承認欲求とは尊厳欲求ともいわれ、誰かに認めてほしい、評価されたいと思う欲求です。

しかし、この承認欲求には2つの側面があります。

自分で自分を認めたい(自尊心や自信、強さや達成)と

他人から認められたい(地位、名誉、信望、優越、評判)などです。

この欲求が満たされると自分が社会で役に立つ存在であるとの感情が沸く一方、満たされない場合は焦燥感や劣等感、無力感に苛まれることになります。

 

■ 自己実現欲求

 

自己実現欲求は自分が望む自分へ成りたいと思う欲求です。

自己実現を求めている人は、他人の評価などではなく自分自身の内にある理想を求めていると言えます。

つまり、より一層自分らしく生きたい欲求という意味です。

 

■自己超越欲求

 

マズローは晩年自己実現欲求の更に上にもう一つの欲求があると発表しました。

それが自己超越欲求です。

自己実現欲求は願いを叶えたいと、欲求が自分に向いている状態ですが、超越欲求はそこから周りにも幸せになってほしいと純粋に思う欲求です。

マズローの欲求5段階説は2つに分けられる。欠乏動機と成長動機

 

ここまで説明してきた5段階+1ですが、このマズロー5段階説には2つの動機に分かれています。

1つが欠乏動機で

生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、承認欲求です。

単純に足りないから欲する欲求で、足りないと不満足が伴います。欠乏動機はある程度が満たされると、人は飽きてしまってその欲求自体を忘れてしまい成長動機に向かう特徴があります。

もう1つがその成長動機です。

自己実現欲求、自己超越欲求がこれに当たります。

コレは今より更によくなりたいとする欲求です。

✓単純に足りないから欲する欲求なのか、
✓今より更によくなりたい欲求なのか

を見極めるのが大切になる事が理解できたでしょうか?

別の見方をすれば、欠乏動機である欲求は本人以外の努力とは別に他人に依存する欲求であり、欠乏動機を満たそうと生きている人は環境に依存していると言えます。

逆に、成長動機で生きている人は自分自身の成長に集中しており、その欲求を満たせるのは自分だけであり、成長動機で生きている人は自律的で独立的であるとも言えます。

 

 

上の図でいうと、下の土台となるべき欲求を満たしていくと次の新しい欲求が生まれるという事です。

ただし、必ずしも下の土台となる欲求が満たされないと、上の欲求が生まれないとか優先されないという訳ではありません。

満たされるはずがないと諦めた時にも上位の欲求が現れてくることもあります。

しかし、人は基本的にこのような形で知らず知らずのうちに順番に欲求について組み立てていく傾向にあるという事を知っている必要があるのです。

マズローの欲求5段 階説を活用したマーケティング

 

マズローの欲求5段階説を活用する前に理解している視点があります。

マクロ視点とミクロ視点です。

この2つの視点をごっちゃにして無自覚で生きている人が作業員マインドの方に大変多いのですが、先にミクロとマクロについて話しておきたいと思います。

ミクロ視点とマクロ視点

マクロとは「巨大、巨視的」を意味します。
ミクロとは「小さな、微視的」を意味します。

結論、
マクロ視点とは「広い視野で物事を見ること」
ミクロ視点とは「狭い視点で物事を見ること」を意味します。

具体的に経済学で説明します。

マクロ経済学は「経済を巨視的な観察、分析していく学問」でGDPであったり国際収支であったり国レベルや政府レベルのデータを分析し、経済政策などを考える。

ミクロ経済学は「経済を微視的な観察、分析していく学問」で経済主体の最小単位である家計や企業とそれらが取引を行う市場について分析します。

最小単位の経済主体である家計や企業の分析と国や国同士レベルの広い視点での分析。この二つの分析があって初めて経済という複雑なものについての理解が深まるのだと思います。

マズローの欲求5段階説を活用したマーケティングに戻ります。

マーケティング戦略を策定する際には

1、市場調査(マーケティングリサーチ)
2、市場細分化(セグメンテーション)
3、ターゲティング
4、ポジショニング
5、マーケティングミックス
6、実行
7、分析

というフレームワークを活用するのですが、主にマーケティングを活用するポイントは、

需要喚起または需要の創出

ですから、顧客の欠乏動機に働きかけるコトに注目します。

ーマーケティングを用いる際の絶対条件ー

どこのお店を選んでもマズいモノが出てこない時代には、
モノにこだわっていても新たな需要は喚起できません。

よーするに、顧客は美味しいモノには飽きているとも言えます。

とはいえ、マズローの大きな欲求である生理的・安全的欲求でさえ顧客は本当に満たせているのかに注目します。

生理的欲求は生命を維持したい欲求でした。

例えば、生理的欲求ならば、

給料日までに生活費がギリギリの顧客は少しでもコスパの低いものでお腹を満たしたい。

安全的の欲求は不安を取り除きたい欲求でした。

例えば、安全的欲求ならば、

ディナーを食べにいくお店の一人当たりの単価を入店前におよその金額を掴みたい。

社会的欲求は所属と愛の欲求でした。

例えば、社会的欲求ならば、

飲食店で働く従業員に顔を覚えてもらって常連客として大切にされたい。「まいどー」と言われたい。

などが考えられますよね?

このように、顧客が求める潜在的ニーズであるウォンツをマズロー5段階説を利用して引き出すことが可能です。

例にあったウォンツだけではなく考えるマーケターの数だけウォンツは見つかるでしょう。

可能な限り潜在するニーズを見つけてください。

こうして見つかった潜在的なニーズを満たすためのコトに注目してお店に反映させていく。

そして、ファザード(入口の見た目、打ち出し)・SNS・WEBサイト・集客サイトに落としこんで発信し、反響を検証して更に研磨していくことがマズロー5段階説を活用したマーケティングです。

マズローの欲求5段階説を活用したマネジメント

 

マネジメントとはどのように人的資産を活用するのかであり、全体的な組織の空気感であるマクロ視点とスタッフ一人一人がどのように考え、どのような欲求があるのかを把握するミクロ視点が必要です。

ミクロ視点で個々の欲求が何段階目にいるのかを把握してないようでは、成長動機を持って頂くための施策が打てません。

マネジメント層に課せられた重要なミッションは人材育成です。

マズロー5段階説を単純に考えてみましょう。

マネジメント層が店回りで新人社員に「声かけ」するシーンからです。
ペルソナとする社員Aは、入社3か月目、ようやく住む家が見つかり引っ越しが済んだが家具や日用品に結構な出費がかさみ、生活がまだ非常に苦しく別でアルバイトを探そうか、割のいい転職先を探そうかと深刻な状況です。
さて、何と声を掛けましょう?
①どう?慣れた?他のスタッフとも連携とれるようになった?
②どう?続きそう?うちは残業代もしっかり付くから生活に安心感あるだろー?
③店長褒めてたよーA君マニュアル完璧らしーねーこのまま頑張ってねー
④どう?不便ない?何か困ったこと周りに相談しにくいことあれば言ってきてねー

さて、どの「声かけ」が適切だったでしょうか?

答えは④ですよね?

生理的欲求が脅かされている人に、承認欲求や安全欲求を満たしてあげる「声かけ」は何の意味もありません。

言葉は提案です。

伝え手が受け手の心にリーチしたければ、受け手に寄り添った視点で気持ち察する。

コレがマネジメントの重要事項です。

マズローの活用ひじょうに大切です。

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